10年の歩み

自然保護助成の10年を振り返って

奥富 清 

 財団法人自然保護助成基金は、平成5年(1993年)4月、国内外における様々な自然保護活動あるいはそれに科学的根拠を与える調査研究を行っているグループに対し、その活動や研究の推進に必要な資金を助成し、地球環境と生物多様性の保全に寄与することを目的として設立されました。以来今日まで、事業も順調に推移し、平成15年4月1日をもって設立10周年を迎えることとなりました。これもひとえにこの間当基金の運営や事業に対して与えられました各位のご指導、ご支援の陽物と深く感謝致しております。

 この10年、公募助成(P.N.ファンド)と直接助成を合わせ、また国内外を含め延約270件の研究や活動に助成して参りました。助成テーマは多岐にわたって自然保護全般に及び、また助成先も大学の研究者チーム、大小の市民団体、海外の研究者など、多様であります。これらの助成先の多くがそれぞれ所期の成果を挙げ、自然の保護に貢献されていることはまことに喜ばしい限りと思っております。

 10年間の助成、とくに国内助成を通覧してみると、日本の自然保護問題の推移と、当基金が助成してきた活動や研究のテーマの推移が驚くほどよく一致していることが分かります。とくにそれは、日本各地に起こり、国民多数の注目を集めた大きな自然保護問題の推移と助成の推移、すなわち、93年から助成の長良川河口堰問題、94年から助成の海上の森万博問題、95年助成の藤前干潟問題と白保珊瑚礁(石垣空港)問題、96年から助成の中海淡水化問題、97年から助成の諌早湾干拓問題、98年から助成の吉野川第十堰問題、00年から助成の川辺川ダム問題、01年から助成の日高横断道路問題と有明海汚染問題、といった推移によく表れております。ここで特記されるべきことは、これらの大きな自然破壊を伴う開発計画の半数以上が撤回、中止、あるいは計画変更(縮小)を余儀なくされ,残りの多くも環境面に種々の問題点をかかえ、そのため今もって最終的なゴーサインを出せない状況にあるということです。

 これは、当基金の助成がまことに時宜を得たものであり、その成果が自然破壊のストッスこ大きく貢献したことを示すものであると信じております。また、ここに挙げた問題以外にも、当基金がなんらかの形で助成した国内の活動や研究が、開発計画の撤回あるいは変更や、生態系・生物多様性の保全に大きく寄与しております。

 当基金ではまた、海外の研究者に助成することを通して、当該諸国の自然の保護にも寄与して参りました。これらの海外助成はこの10年間に、中岡、インドネシアをはじめとして、広くアジア、アフリカ、南米などの20か国近くに拡がっております。

 近時、自然保護の重要性の認識やそれへの取り組みは10年前に比べ格段に進み、一方また経済情況の悪化もあって、最近は新たな大規模開発等の計画が少なくなっております。しかし残念ながら、自然保護上問題点が多々指摘されているにもかかわらず依然として工事を進め、あるいは何年も前に立てられ未着工のままの大規模開発計画が未だに残されており、さらにはまた、自然破壊が計測される中小規模の開発計側か後を絶たないのが現状です。したがって、自然保護活動やそれに直結した科学的研究、あるいは生態系・生物多性の保全に関する基礎的、応用的研究などの重要性は、今後ますます高くなることはあっても決して低くなることはないといえます。このような状況下、今後も、当基金の助成がこれらの活動や研究の推進に大いに役立ち、内外の自然の保護、ひいては地球環境の保全に寄与できることを望んでやみません。
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10年の歩み.8p.  2795KB v. 1 2011/01/31 22:47 ユーザー不明